学校の勉強は起業の土台になる
塾で授業をしていると、子どもたちからいろいろな質問が飛んでくることがあります。
「先生、なんで勉強せなあかんの? 俺、将来起業するし、関係ないやん」
本質を突いた「いい質問」です。今日はこれに、正面から答えてみたいと思います。
学校の各教科には、それぞれ役割があります。
算数・数学は、数字を扱う力。物事を数に置き換えて考える訓練です。
国語は、いくつになっても意思を伝えるために欠かせない最重要科目です。
理科は、観察と原理原則を理解する力。
社会は、政治経済や偉人の功績、各地域の特性を学ぶことで、世の中の仕組みをつかむ教科です。
英語は、異国の文化に触れ、共通語として人や仕事をつないでいく力になります。
基本的には、この5つがうまくまとまって、学生時代に身につくように設計されています。
そう聞いて「全部、起業に関係あるやん」と気づく子はかなり感性がよい子です。
今回は、起業と学校の勉強に焦点を当てて話を進めていきます。
小学生の算数:「ビジネスの生死」を分ける超重要教科
まず、小学校の算数です。「こんなん電卓で十分やろ」と言う子がいますが、電卓は間違った数字を入れても、そのまま答えを返してきます。
判断の入口で間違えていれば、出口の答えも間違っているということです。
教室の中でのやり取りです。
「先生、100円の1割引って110円やんな?」
「えっ、1割引きやで。引くんやで。増えてるやん。その10円、どこから来たん」
「あっ、ポケットにしまう気やな。横領罪やで。」
1割引という言葉の意味、つまり「全体の1割分を引く」という概念がぼやけているんです。
1割の利益、1割の値引き、1割の手数料。ビジネスの世界には「1割」が山のように出てきます。
電卓で1割分を瞬時に出せますか、と問われて、パッと答えられない人は案外多いものです。
「1割」の感覚が曖昧な子は、消費税の計算でもよく止まります。
税込金額を出すときに「1.1を掛ける」ということは、みんななんとなくわかります。
でも、中には0.1を掛けて、税額を出してから原価に足す子もいます。
もちろん、計算としてはそれでも合います。
ただ、頭の中で「1割増し」という感覚がまだ曖昧で、整理されていないので、毎回まわりくどくなるんです。先に税額を出したいんですね。律儀です。
さらに、税込金額はすぐに出せるのに、「じゃあ税抜金額を求めて」と言うと、急に手が止まる子も多いです。なぜか「 ÷1.1」が浮かばないんです。
掛け算は好きですが、割り算はあまり人気がありません。
よく「ケーキをみんなで仲良く分けて食べなさい」と言われたからでしょうか。
でも、商売をするとなると、ここで止まるわけにはいきません。
税込と税抜を行ったり来たりする感覚は、日常的に必要になるからです。
別の子は、自分が作ったキーホルダーを学校のバザーで売る話をしていました。
「材料費が100円やから、10円で売ろうと思う」
「えっ、100円で仕入れたのに10円で売るん?それは1割のことやん。1個売るたびに90円ずつ減っていくで。明日まで、そのお店続かんやん。倒産決定やで。」
笑い話のようですが、これは小学校の割合の単元でつまずいたまま、感覚が育ちきっていないということです。
さらにややこしいのが、「ベース」の問題です。全体は、1なのか10なのか100なのか。
でも0は0です。この理不尽さが苦手というレッテルをさらに強固にします。
同じことを言っているのに、「割」「%」と表記が変わるだけで、ベースが変わります。
だから、子どもはパニックになります。「先生、本物はどれなん?」と聞いてきます。
その気持ちはわかります。ただ、起業をすればこの3つは毎日、行き来することになります。
利益率は%、原価は割、シェアは小数。同じ数字を3通りで扱える人と、1通りでしか扱えない人とでは、判断のスピードがまるで違ってきます。
割合、概算、損益。起業家が日々頭の中で回しているこの計算は、すべて小学校で習っているんです。
国語の必要性:全教科とビジネスの基盤
国語は、いくつになっても必要な教科です。
むしろ、大人になってから「やり直したい」と言われる教科の筆頭でもあります。
あるとき、子どもがことわざをこう覚えていました。
「先生、七転び六起きって、あれどういう意味?」
「あららっ、それ、1回足りひんで。起き上がれてないやん。寝てる方が多いやん。」
笑い話で済めばよいのですが、これは典型的な失敗例です。
理屈を考えずに暗記だけに頼ると、こうなります。
しかも国語のややこしいところは、「七転び八起き」もあれば「七転八倒」もあるところ。
一体、人は何回倒れるのか、子どもからすれば混乱します。
ここで大事なのは、丸暗記ではなく「意味から考える」習慣です。
七回転んだら八回起きる。起き上がる回数のほうが多いから前向きな言葉になる。
そう理屈で押さえれば、もう忘れません。
起業をすれば、契約書を読み、提案書を書き、お客さんに説明し、仲間やスタッフに協力してもらうことになります。そのすべてが、読む力と書く力と話す力の上に成り立っています。
読み取る力がないと、契約書の小さな一文で損をします。
書く力がないと、どれだけ良い商品を持っていても伝わりません。
話す力がないと、仲間も顧客もついてきません。
しかも国語は、大人になってから身につけ直すのが一番しんどい教科です。
算数や数学は公式を覚えれば取り戻せる部分があります。
国語は、長い時間をかけて言葉のセンスを育てるしかありません。
だからこそ、子ども時代に積み上げたものが、一生効いてくるんです。
中学生・高校生に伝えたい:今やっていることは「むだ」じゃない
中学生・高校生にも、声をかけておきたいと思います。
まず先にやってほしいのは、小学校内容の完全克服です。
「もう中学生やのに、今さら?」と思うかもしれません。しかし、意外とできていないものです。
先ほどの割合の話、ことわざの話。
こうした基本を修復せずに、中学・高校に進んでしまう子は意外に多いです。
土台に穴があると、その上に何を積んでも崩れます。
その上で、応用思考に進んでください。
小学校内容と日常の常識をベースに、より専門的な内容に踏み込んでいく。
中学・高校の勉強は、まさにこの訓練です。
そして、ここで地味に大切になってくるのが、理科と社会です。
商品を作るなら理科の知識が要ります。市場や法律の動きを読むなら社会の知識が要ります。
「自分の専門と関係ない」と思っていた教科が、起業した瞬間に専門分野の入口として効いてくる。
これは、現場に出てから何度も実感する場面が訪れます。
中学・高校でやっている勉強は、無駄ではありません。
むしろ、起業家としての引き出しを増やしている時間です。
起業する上で本当に大切なこと
では、学校の勉強さえできれば起業で成功するのか。そうではありません。
起業する上で本当に大切になるのは、二つあります。
ひとつは、得意分野の延伸です。
苦手の克服に時間を使うよりも、得意なことに磨きをかけたほうが、起業家としての武器になります。学校の通知表は全教科バランスを求められますが、起業は違います。
突き抜けたひとつがあれば、それで戦えます。
もうひとつは、職種に応じた「生きた知識」の習得です。
テキストに書いてある内容だけでは、現場では足りません。
実社会に出て、自分の仕事に直結する知識を、自分の手で取りに行く。
お客さんの声を聞き、競合を観察し、業界の慣習を学ぶ。これは学校では教えてくれません。
ただし、これらは学校の勉強という土台があってこそ乗るものです。
土台がぐらついたまま武器だけ磨こうとすると、いちばん早く転びます。
まとめ:今しかできないことを、今やる
知識だけを追い求める必要はありません。
テストで満点を取らないと起業できないわけでもありません。
ただ、最も大切なことは「今しかできないことを、今やる」ことです。
小学校4年生で中学3年生の英語ができる、という子に出会うことがあります。たいしたものです。
しかし、その子が小学4年生の漢字を書けないとしたら、これはちょっと、喜べない話です。
順番が逆になっています。
今やらなければならないことを確実に習得してから、次のステップに挑む。
この原則は、勉強だけの話ではありません。起業の現場でも、まったく同じです。
起業するからこそ、勉強してほしい。
起業するからこそ、今の一問一問が、未来の自分を支える一つひとつの階段になっていきます。
そして、その階段が多ければ多いほど、自分が得するようになっているのです。
それを経験値と呼びます。
まだまだ時間はあります。学ぼうと思えばいくらでも勉強できます。
どの分野でもどのジャンルでもいくらでも。
順番をまちがえずに、自分が納得いくまで学習してください。
学校の勉強は大切ですし、習得したものはいつまでもあなたの心に座り続けていますよ。
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